静かで優雅な革新
1967年5月から7月にかけて精力的に行われたスタジオレコーディングから、本作『NEFERTITI』と前作『ソーサラー』が生まれました。全6曲あり、ウェイン・ショーターが3曲、ハービー・ハンコックが2曲、トニー・ウィリアムスが1曲を作っています。『ソーサラー』にしてもいわれることですが、ここでも「実際のリーダーはショーター」と知った顔で言うジャズファンが必ずいます。
この手合いはマイルスのオリジナリティとの接触を目指す者にとって最悪の先輩です。自分の利権を守るために無駄な施設を建てまくった社会保険庁の悪役人のようなものです。世の間違いはおおむね放っておけばよいものですが、「実際のリーダーはショーター」に関してはメディアの役割として即座に正さなくてはいけません。
マイルスという師を得て開花したウェイン・ショーターの曲は素晴らしいものばかりです。そしてそれはマイルスのトーンを纏って完成されます。作曲から演奏まで全員がマイルスを見、マイルスが目指す地点へと向かって全神経を集中させています。マイルスはメンバーの成長によってより音楽の、オリジナリティの創造へと神経を集中させることができるようになっています。
アドリブのない1曲目などは、この時点でマイルスには『イン・ア・サイレント・ウェイ』が見えていたのではないか? と思えるほどトーン、音色、新しい響きに集中したマイルスを聴き取ることができます。
60年代黄金のクインテットと呼ばれる、マイルス以下の5人はそれほど素晴らしいメンバーであったということでしょう。新しいトーンへの扉は確実に開かれています。
- NEFERTITI(Wayne Shorter)7:52
- FALL(Wayne Shorter)6:39
- HAND JIVE(Tony Williams)8:54
- Madness(Herbie Hancock)3:04
- Riot(Herbie Hancock)7:47
- Pinocchio(Wayne Shorter)5:08
レーベル:COLUMBIA
録音:1967年6月7日、22日、23日、7月19日、アメリカ、ニューヨーク、コロンビアスタジオ
- Miles Davis:trumpet
- Wayne Shorter:tenor sax
- Herbie Hancock:piano
- Ron Carter:bass
- Tony Williams:drums