50年代、ハード・バップの魅力、好調なマイルス



ハード・バップの要素が感じ取れる1951年のアルバム『DIG』。マイルスの自叙伝によると、本作の録音現場にはビ・バップを代表する天才サックス奏者、チャーリー・パーカーもいたそうです。

一方のハード・バップを代表するドラム奏者アート・ブレイキーがどっしりと中心に座り、マイルスが肩を並べ、ロリンズが挑み、弱冠19歳のジャッキー・マクリーンが必死になって吹きます。マクリーンは初レコーディングのうえ、自身のアイドルだったパーカーに聴かれているのですから、それはもう緊張したでしょう。

マイルス、ロリンズも20代半ば、ブレイキーも30代に入ったばかりと全員が若く、LP録音によりそれまで1曲3分程度という録音の制約からミュージシャンを解き放って、新しい流れを作り出していく力強さと自由な解放感に満ちあふれています。

マイルスもLP録音の技術には大変感激しており、自叙伝でこう語っています。「この新技術がもたらす自由な可能性に興奮していた。それまでのお決まりの3分間の演奏には飽き飽きしていたんだ。大急ぎでソロを始めて終わらせなくちゃならないし、本当に自由なソロを取るスペースなんてなかったからだ。~中略~新しい長時間演奏のフォーマットは、オレのために発明されたようなものだった。」(「マイルス・自叙伝1/宝島社」)

そういった興奮と新しい場所へ進もうとする逞しさが1曲目からいきなり全開です。マイルス、ロリンズ、マクリーンの3管フロントラインが吠え、ブレイキーが時には受け止め、時には催促します。

2曲目の「IT’S ONLY A PAPER MOON」も大好きな曲です。麻薬に苦しんでした時代のマイルスでしたが、この日は自身も「最高の演奏になった」と振り返っているとおりの好調さが肌で感じ取れる演奏を披露してくれます。微妙な旋律の変化やトーンで聴かせるマイルスの表現力はスタンダードを枠にはめることなく、可能性を豊かに大きく開いてくれます。

  1. DIG(Miles Davis)7:36
  2. IT’S ONLY A PAPER MOON(Arien-Rose-Harburg)5:25
  3. DENIAL(Miles Davis)5:42
  4. BLUING(Miles Davis)9:56
  5. OUT OF THE BLUE(Miles Davis)6:19
  6. MY OLD FLAME(Coslow-Johnston)6:35
  7. CONCEPTION(George Shearing)4:01

レーベル:PRESTIGE
録音:1951年10月5日、ニューヨーク

  • Miles Davis:trumpet
  • Jackie McLean:alto sax(#1,3,4,5)
  • Sonny Rollins:tenor sax
  • Walter Bishop:piano
  • Tommy Potter:bass
  • Art Blakey:drums