この言葉を放って、相手を納得させる人間は数少ないでしょう。どんなに素晴らしい音楽家でも、金儲けをクリアせずマイナーな存在では、その声も音楽も我々に届かないからです。本物の音楽を創り、聴衆に迎合することを基本コンセプトとせず、人種差別とも闘いながらメジャーな地位を獲得したマイルス・デイビス。これほど困難なことを成し遂げた人は希有です。

マイルスが無愛想だとか、パフォーマンスが足りないなどという人がいます。確かにマイルスは演奏中にまったく聴衆に目もくれず、もちろん愛想笑いなどありません。自分自身の音楽のために演奏し、彼の言う「金儲けだけが目的の白人達」(日本人にも同類がたくさんいますね)と闘い、音楽だけに集中しています。

しかし、それこそが我々と偉大なアーティストのフィーリングを繋ぐ唯一の方法なのです。愛想笑いやエンターテインメントなどにかまけていたら、あっという間に狡猾な奴らに「ただの金儲け」にされてしまいます。マイルスは音楽だけに集中し、我々もまた彼の音楽だけに集中すればよいのです。その認識を常に深めておくために、この言葉は名言なのです。