TUTU

2013年に入って一息ついたと思いきや、マイルス関連の大きなニュースが飛び込んできました。

「故石岡瑛子さん、米アカデミー賞候補に 衣装デザイン賞」(日本経済新聞)

昨年1月に73歳で死去した石岡瑛子さんは、1986年に発売された『TUTU』のアートディレクターを務めた方です。『TUTU』は、グラミー賞音楽賞の他、デザイン部門賞も受賞しています。

ジャケットにマイルスの顔のアップと手のアップのみを使用するという大変シンプルなデザインが印象的な本作について、石岡さんは「ミニマルな表現」と言っています。

(この辺りの詳しいことは、こちらのサイトに掲載されているプレイボーイ・ジャパンの記事をどうぞ)

上記のリンクにある記事を読むと、石岡さんはマイルスの音楽をそれほど聞き込んでいなかったと想像されるにもかかわらず、『TUTU』のジャケットデザインにあたって「ミニマル」を選択したことは、鋭い嗅覚というのか勘というのか、とても的を射ています。

「トランペットがなければマイルスは音楽表現はできない」的な言葉などは「?」が100万個くらいつきますが、それでも正解を導き出してしまう感性は、さすが名デザイナーと言わざるを得ません。

というのも、ワーナー移籍第1弾となった『TUTU』は、マイルスがディレクションとトランペットに集中し、これまでになくマイルスの人生というか人間といってもいいのか、それを感じさせてくれるかのように率直に吹き上げているからです。マイルスのオリジナリティに接触したことのある方ならわかるはずです。まさに「ミニマル」、あのジャケットデザインがぴたりとはまるのです。

マイルスがそうできた理由はマーカス・ミラーです。作曲、ベース、ドラム、ピアノもそしてシンセサイザーなどのデジタル機器も使いこなす魔術師のような相棒、マーカス・ミラーを得たマイルスはマーカスに曲の方向性を与え、彼の持ってきた曲に指示を出す形で曲を作り、完成された演奏の上にトランペットをのせていきました。

マイルスのジャケットを手がけた日本人デザイナーが死してもなお、ご活躍される姿はとても嬉しいものです。受賞を心より祈念いたします。

それにしても上記の日経の記事はひどい。マイルスの「マ」の字も出てこない。今後一切、日経は身銭を切ってまでは購読してやらんと心に決めました。